• 暗号資産:税の課題と提言(一般社団法人新経済連盟)

    2023年4月11日

    一般社団法人新経済連盟は、暗号資産に関する税制上の課題と提言を公表しました。

    1.法人
     企業(スタートアップ企業に限らない)が自社発行かつ自己保有するトークン、またはスタートアップ企業が自社発行かつ第三者が保有するもののうち短期売買目的でないトークン、について、企業の成長と拡大を支援する観点から、時価でなく簿価で評価できるようにすることをを求めています。

    2.個人
    (1)総括
     暗号資産の取引から生じる利益を申告分離課税(一律20%)対象とすること、暗号資産の取引から生じる損失の繰越控除を認めること、暗号資産デリバティブ取引の申告分離課税を認めること、相続した暗号資産への課税のあり方(相続税評価時・譲渡時)を見直すこと、などを求めています。

    (2)所得税と暗号資産について
     暗号資産に係る所得税は、現行、暗号資産の取引から生じる利益が雑所得(損益通算が認められない)、総合課税の対象(累進課税)、損失の繰越控除の禁止、という取扱いとなります。
     しかしこの現行税制度は、海外と比べると要件が厳しく、かつ税額も高いため、意識が高い納税者は、日本より税率が低い国へ移転したり、国内に滞在したままでも雑所得20万円以下に抑えることで納税義務を回避する行動を選択します。
     そのため本提言では、暗号資産の取引から生じた利益を申告分離課税の対象とすること、および損失の繰越控除を認めること、を求めています。 

    (3)相続税の取得費加算について
     暗号資産の相続税評価額は、現行法令上、相続開始日の最終価格のみ認めています。しかし暗号資産は価格変動が大きく、仮に相続開始日の取引価格が偶然にも高騰した場合、納税者の負担が増大することが問題となります。
     そのため本提言では、相続開始日の最終価格(時価)のほか、相続月を含む過去3月の月平均時価も含めた最低価額を相続税評価額とすることを認めるべきとしました。

    (4)相続税の取得費加算について
     相続した暗号資産の取得原価は被相続人の購入時の取得原価を引き継ぎます。これはつまり、納付した相続税が所得税法上の取得価額に反映されないこと、暗号資産の相続人は、相続時の時価で評価した額に対する相続税を負担した上、譲渡時には相続税負担を考慮しないで計算した所得税を負担すること、を意味します。
     そのため本提言では、相続した暗号資産を譲渡する場合、相続税の一部を取得費に加算することにより税額を軽減できる特例を創設することを要望しています。

    3.今後の動向に注目です。